第5章|限界だった、あの頃の私

パテラのリハビリ中、朝焼けの道を愛犬と歩く飼い主の後ろ姿

Instagramを開くたびに、胸がざわつきました。

同じくらいの月齢の子たちが、

芝生の上を思いきり走っている。

目をキラキラさせながら、

全力で、楽しそうに。

画面越しなのに、

なぜか、息が詰まりました。

「いいな」

そう思った瞬間、

自分を責める気持ちが追いかけてきました。

大きな公園へ行った日のことも、忘れられません。

広い空。

青い芝生。

その奥にあったドッグラン。

フェンスの向こうで、

同世代の子たちが駆け回っていました。

ラムは気づいた瞬間、

ドッグランに駆け寄り、

外側から一生懸命吠えていました。

「なんでアタチだけ走れないんだー!!」

そう言っているみたいで、

胸がぎゅっとなりました。

本当は、入れてあげたかった。

思いきり遊ばせてあげたかった。

でも、できなかった。

すると、中にいた飼い主さんが

笑顔で声をかけてくれました。

「中に来たら?」

悪気なんて、もちろんない。

優しさでした。

それなのに私は、

何も言えなかった。

説明すればいいのに。

「今リハビリ中で」と言えばいいのに。

言葉が出なかった。

ただ、曖昧に笑って、

その場を離れた。

あのときの帰り道は、

やけに長く感じました。

「インスタからの一緒に遊びませんか?」

そのメッセージに、

何度もスマホを閉じました。

嬉しいはずなのに、

ありがたいはずなのに、

返事を書く指が、止まる。

断るたびに、

世界から少しずつ

外れていくような気がしました。

置いていかれているのは、

ラムじゃない。

きっと、私の心だった。

それでもラムは、

フェンス越しに走る子たちを見つめながら、

最後まで尻尾を振っていた。

入れないことを、

責めることもなく、

「じゃあ、ママと歩くか」

そんな顔で、

私の横に戻ってきた。

短い足で、

ゆっくり、ゆっくり。

走れない日も、

遊べない日も、

ラムはいつも、

今その瞬間を生きていた。

比べて、

立ち止まっていたのは、

私のほうだった。


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