怖い物克服記④|グレーチング

グレーチングの上で立ち止まる小型犬のラムと克服後の様子

お散歩デビューをして、
外の世界に大興奮だったパピーのラム。

右へ左へグイグイ引っ張る。
かと思えば、突然止まる。
犬を見れば飛びかかろうとする。

向かうところ敵なし——

そんなラムにも、
ひとつだけ苦手なものがありました。

グレーチングです。

グレーチングが現れると、
ピタッと動きが止まります。

リードを引いても動かない。

私は無理に引っ張ることはせず、
ラムのペースで様子を見ていました。

「さぁ、どうする?」

ラムはしばらく考えます。
じっと見つめて、動かない。

そして——

考え抜いたあげく、

端っこの、ほんの少しだけ地面になっている部分を選び、
早歩きでこちらに歩いてきました。

いつも、そんな感じでした。

グレーチングはあちこちにあります。

そのたびに私は

「ジャンプ!」と声をかけました。

でも、なかなか跳べない。

怖かったのだと思います。

そんなやり取りを繰り返しながら、

少しずつ、少しずつ——

ラムは勇気を振り絞って、

ジャンプできるようになっていきました。

そして夏。

私たちはラムを連れて、
栃木県の「木の俣渓谷」へ行きました。

「アクアブルー」「ラムネ色」「エメラルドグリーン」
そう表現されるほど、透明度の高い美しい川です。

ずっと憧れていた場所。
片道3時間かかりましたが、私はルンルンでした。

ラムは水が苦手だったので、
念のためボディボードも持参。

ですが——

近づくにつれて、だんだん雲行きが怪しくなり、
到着した頃にはどんより曇り空。

川の水はグレー。

そして、びっくりするほど冷たい。

ラムはというと、

「死んでも入りませんから」

という顔をしていました。

仕方がないので、
そのまま緑地をお散歩することに。

そこで現れたのが——

オールグレーチングの吊り橋。

「さぁどうする?ラム😂」

私たちは、様子を見守りました。

ラムは固まって動きません。

リードを引いても動かない。

でも、Uターンして逃げることもありませんでした。

たぶん、
勇気を振り絞っていたのだと思います。

しばらくして、
私がラムの横に並び、
ゆっくり一歩踏み出すと——

ラムも、ゆっくり歩き出しました。

一歩ずつ。
本当にゆっくり。

そして、ゴールが近づいたその瞬間——
急に小走りになって、渡りきり、

「渡れました」

そんな顔で、こちらを見てきました。

私たちは思わず拍手。

「すごいね、できたね」

たくさん褒めました。

もしかしたらラムにとっては、

人間でいう

“バンジージャンプの直前”

そんな気持ちだったのかもしれません。

今では——

グレーチングをあえて選ぶことはありませんが、
ジャンプして通ることはできるようになりました。

天然のアジリティのように、
楽しそうにぴょんっと飛んでいます。

ラムはときどき、
こんな顔をします。

「いや、あれ普通に難しかったからね?」

でも今は、
グレーチングもただの通り道。

きっとこれも、
ラム先生の授業のひとつです。

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