お散歩デビューをして、
外の世界に大興奮だったパピーのラム。
右へ左へグイグイ引っ張る。
かと思えば、突然止まる。
犬を見れば飛びかかろうとする。
向かうところ敵なし——
そんなラムにも、
ひとつだけ苦手なものがありました。
グレーチングです。
グレーチングが現れると、
ピタッと動きが止まります。
リードを引いても動かない。
私は無理に引っ張ることはせず、
ラムのペースで様子を見ていました。
「さぁ、どうする?」
ラムはしばらく考えます。
じっと見つめて、動かない。
そして——
考え抜いたあげく、
端っこの、ほんの少しだけ地面になっている部分を選び、
早歩きでこちらに歩いてきました。
いつも、そんな感じでした。
グレーチングはあちこちにあります。
そのたびに私は
「ジャンプ!」と声をかけました。
でも、なかなか跳べない。
怖かったのだと思います。
そんなやり取りを繰り返しながら、
少しずつ、少しずつ——
ラムは勇気を振り絞って、
ジャンプできるようになっていきました。
そして夏。
私たちはラムを連れて、
栃木県の「木の俣渓谷」へ行きました。
「アクアブルー」「ラムネ色」「エメラルドグリーン」
そう表現されるほど、透明度の高い美しい川です。
ずっと憧れていた場所。
片道3時間かかりましたが、私はルンルンでした。
ラムは水が苦手だったので、
念のためボディボードも持参。
ですが——
近づくにつれて、だんだん雲行きが怪しくなり、
到着した頃にはどんより曇り空。
川の水はグレー。
そして、びっくりするほど冷たい。
ラムはというと、
「死んでも入りませんから」
という顔をしていました。
仕方がないので、
そのまま緑地をお散歩することに。
そこで現れたのが——
オールグレーチングの吊り橋。


「さぁどうする?ラム😂」
私たちは、様子を見守りました。
ラムは固まって動きません。
リードを引いても動かない。
でも、Uターンして逃げることもありませんでした。
たぶん、
勇気を振り絞っていたのだと思います。
しばらくして、
私がラムの横に並び、
ゆっくり一歩踏み出すと——
ラムも、ゆっくり歩き出しました。
一歩ずつ。
本当にゆっくり。
そして、ゴールが近づいたその瞬間——
急に小走りになって、渡りきり、
「渡れました」
そんな顔で、こちらを見てきました。
私たちは思わず拍手。
「すごいね、できたね」
たくさん褒めました。
もしかしたらラムにとっては、
人間でいう
“バンジージャンプの直前”
そんな気持ちだったのかもしれません。
今では——
グレーチングをあえて選ぶことはありませんが、
ジャンプして通ることはできるようになりました。
天然のアジリティのように、
楽しそうにぴょんっと飛んでいます。
ラムはときどき、
こんな顔をします。
「いや、あれ普通に難しかったからね?」
でも今は、
グレーチングもただの通り道。
きっとこれも、
ラム先生の授業のひとつです。
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