第4章|正解をやっているのに、うまくいかない

パテラのリハビリに取り組むジャックラッセルテリアのラム

先生に教えていただいたリハビリを、

私は真面目に実践しました。

でも——

まだ一歳になりたてのラムに

「ゆっくり歩く散歩」は、まずもって無理な話でした。

とにかく走りたい。

引っ張る。

他の犬がいれば遊びたい。

これはまずトレーニングからだな、と

毎日、ゆっくり歩く練習の日々が始まりました。

できない。

走りたい。

遊びたい。

ラムはまだ若く、

お友達とのワンプロ全盛期。

もちろん今はNG。

お友達と会わない時間帯を選び、

誰もいない散歩コースを歩く。

ただ、歩くだけ。

ラムは走りたい。

私は走らせてあげたい。

でも走らせられない。

その葛藤の中で、

私はだんだんイライラするようになっていました。

数カ月後、

「走るのはOK。でもドッグランはまだNG」と言われました。

体当たりに耐えられるだけの筋肉が、まだない。

そんな中、近所の公園にミニドッグランができ、

ジャックのパピーが三頭生まれました。

ラムも一緒に遊ばせてあげたい。

でも今は無理。

たまに少しだけ走らせると、

本当に嬉しそうでした。

その姿を見るたびに、

可哀想で、泣きたくなりました。

どうして、

うちのラムだけ。

でも——

今、少し我慢すれば、

また自由に思いきり走れる日が来る。

「ラム、一緒に頑張ろう」

そう話しかけながら、

私は自分にも言い聞かせていました。

そして、散歩前のマッサージ。

これがまた、簡単ではありませんでした。

五分間。

たった五分。

でも、暴れる一歳のジャックには長すぎる時間。

先生に教わった通り、

抱き上げた状態で片足ずつマッサージ。

両足で十分。

長い。

暴れる。

ある日、

「温めるのもいいですよ」という先生の言葉を思い出しました。

私の足の間に伏せさせ、

「あずきのチカラ」を腰に当てながらマッサージ。

冬だったこともあり、

ラムはウトウトしながら大人しくなりました。

やっとできた。

そう思ったのも束の間。

病院でその話をすると、

「立った状態でマッサージした方が効果的です」

ああ、無理だ。

そう思いました。

それでも毎日、試行錯誤。

ラムも少しずつ慣れ、

一年かけて、ようやく形になっていきました。

月に一度の通院。

けれど、なかなか筋肉はつかない。

「もう少しですね」

その言葉を聞くたびに、

私はどこか責められているような気持ちになりました。

そして、ストレスからなのか、

ラムの問題行動が増えていきました。

散歩中、犬を見ると吠える。

ベランダに向かって過剰に吠える。

部屋のあちこちにおしっこをする。

私はどうしていいか分からず、

ドッグトレーナーを探しました。

でも——

「発散が足りないんですよね」

「預かりはできますが、パテラに関しては責任は取れません」

「最終的にはお母様のご判断で」

その言葉に、正直、傷つきました。

何件か回りましたが、

「パテラ」というだけで

線を引かれてしまう感覚。

孤独でした。

パピーの頃に「子犬の幼稚園」でお世話になっていた動物病院が担当する「運動部」の先生にも相談しました。

運動部はリハビリ療法士さんが担当しているクラスでした。

お話を伺うと、

術後の犬のリハビリ内容は、

・ほぼマッサージ

・ゆっくり歩く

・水中ウォーク

・軽いバランスディスク

・そして最後にまたマッサージ

という流れだそうです。

手術した足が治ったあとも、

犬はどうしてもかばって歩いてしまう。

だからこそ、正しく使えるように整え、

少しずつ筋肉を育てていく——

その説明を聞いたとき、

私ははっとしました。

ラムが続けてきたことと、
ほとんど同じだったからです。

間違っていなかった。

そう思えた瞬間でした。

筋肉をつけるため、

高タンパクのフードに変え、

ささみも毎日与えました。

すると今度は便が安定しなくなりました。

軟便、下痢が数カ月。

血液検査は異常なし。

整腸剤も効かない。

原因は分からないまま、

狂犬病の注射もなかなか打てず、焦りました。

(後に手作り食に変えて改善。

ラムには合わなかったのだと思います。

そして私の知識も、足りていませんでした。)

そんなとき、

「スウェーデン式マッサージ」が

パテラに良いという記事を見つけました。

最初はもがいていたラムも、

だんだん慣れ、

やがて施術中に眠るようになりました。

そしてそのマッサージの翌日。

みなとよこはま動物病院での診察。

正直、また

「まだですね」と言われる覚悟でした。

ところが——

「筋肉、ついてきてますね!」

「足も柔らかくなっています。

少し芯は残っていますが、

これならこれからどんどん筋肉ついてきますよ」

嬉しくて、

飛び上がりそうになりました。

やっと。

やっと、報われた。

そのとき私は、

マッサージの大切さを

本当の意味で理解しました。

後にホリスティックケアを学ぶことになるのは、

きっとこの瞬間がきっかけです。

「もう走って大丈夫ですよ」

「ドッグランもOKです」

ただし、

基本的にはゆっくり歩くこと。

マッサージは続けること。

体重は増やさないこと、

一年間のリハビリ終了。

あの一年は、

正解をやっているのに

うまくいかない一年でした。

でも——

あの一年がなければ、

私はラムの体を、

ここまで真剣に見つめることは

なかったと思います。

あの時間が、

私たちの土台になりました。

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