第1章|手術と言われたあの夜、私は未来を失った気がした

朝焼けの道を歩く女性とジャックラッセルテリアのラム。不安の中で始まった日々
目次

ラムがパテラと診断された日

ラムは生後5ヶ月のとき
パテラ(膝蓋骨脱臼)と診断されました。

そのときは、
まだ「小型犬にはよくあること」と
言われました。

そして生後10ヶ月のとき
手術をすすめられました。

「早めに手術を検討した方がいいでしょう。」

その言葉を聞いた瞬間、
世界の音が遠くなりました。

まだ10ヶ月。
さっきまで、公園で走っていたのに。

病院を出たあと、
何を考えて帰ったのか覚えていません。

家に着くと、
ラムはいつも通りでした。

お水を飲んで、
おもちゃを咥えて、
しっぽを振っていました。

さっきまで「手術」と言われていた子とは思えないほど、
普通でした。

その“普通”が、
逆に怖かった。

夜。
深夜12時過ぎ。

ラムと主人が眠ったあと、
真っ暗な部屋で、私は一人で座っていました。

頭の中では、
未来の映像が勝手に流れ続けます。

歩けなくなったらどうしよう。
走れなくなったらどうしよう。

こんなに元気いっぱいなのに。
こんなに走るのが好きなのに。

一緒にやりたかった
アジリティは?
フリスビーは?
思いきり走る未来は?

まだ何も決まっていないのに、
私は“できない未来”ばかり数えていました。

気づけば、涙が止まらなくなっていました。

声を押し殺そうとしても、
嗚咽が漏れました。

そのとき、ラムが起きてきました。

洗濯かごから私の下着を咥えてきたり、
わざとみたいにおしっこをしてこちらを見たり、
おもちゃを持ってきたり、
顔をぺろぺろ舐めたり。

まるで、

「ねぇママ、いつもみたいに叱ってよ」
「おしっこできたねって褒めてよ」
「よーし遊ぶぞー!って笑ってよ。」

そう言っているように感じました。

でも同時に、
こんな風にも聞こえてしまいました。

「一緒にドッグスポーツができなくてごめんね」
「パテラでごめんね」

また涙が溢れてきました。

謝るのは、ラムじゃない。
怖がっていたのは、私でした。

ラムは、
ただ今日を生きているだけでした。

足のことなんて気にもせず、
私の顔だけを見ていました。

あの夜、
未来を失った気がしていたのは、私だけでした。

ラムは、ちゃんとそこにいて、
ちゃんと歩いていました。

それなのに私は、
“できない未来”ばかりを数えていたのです。

まだ何も、失っていないのに。

そしてここから
ラムの「授業」が始まりました。

ラムはときどき、
人生の先生になります。

だからこのブログでは、
ラムから教わったことを
ラム先生の授業として
そっと残していこうと思います。

体高30センチの
小さな先生の授業です。

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